【良い人】と【悪い人】
キューバに来てから、多くの時間を人と話すことに使うようになった。
「チーノ?コリア?ハポネス?(中国?韓国?日本人?)」と街角で声をかけられ、
「ソイハポネス!(日本人ですよー)」と返事する。
そっから、えーほんと!イチロースズキじゃんか!マツザカじゃんか!と野球の話題になったり、子どもがわざわざお母さんのところに走っていって、あの人日本人だって!なんて言っていたり、じゃあその自転車もか!?SHIMANOなのか!?なんて聞かれて、そうだよ!と答えるとじゃあ交換しよっか!と30年くらい前の自分のボロボロの自転車を指差してワッハッハと笑っていたりする。
宿でもそう。ネットなんて高級ホテルでしか繋がらないので、1日走り終わったら宿のおっちゃんおばちゃんと話をしたり、同じ宿に泊まっている旅人とお互いの旅や人生のことを話したり、情けない話だけれどWIFIが繋がる国での旅の何倍も濃い1日1日を過ごしているような気がする。ネットに時間を割かない分、目の前の人に割く時間や考える時間がグッと増えたようだ。
キューバでのええ人との出会いのことをいくつかのエピソードとして書いてきた。けど毎日出会う全ての人といい出会いやった!となっているわけではもちろんない。
例えば、お金のこと。キューバではキューバ人が使うモネダと呼ばれる通貨と外国人が使うCUCと呼ばれる通貨で分かれているのだが(外国人もモネダに両替して食事をしたり、買い物したりできる。1米ドル=だいたい1CUC=25モネダ)、物価のことをよく知らないままだと、値段を誤魔化されてだいぶ高いお金を払ってしまっていることが結構あるし、騙されることもある。
例えばほんとは1モネダの商品なんだけど1CUC払ってしまって、あとから気づく。
前の人が3モネダで買っていたソフトクリームを僕には同じ値段では売ってくれない。
タダでダイジョブだから!と気前よく馬に乗せてくれたり、何かをしてくれるんだけれど終わったあとに急にお金を請求される。
などなど。だから旅人同士で話していても「もうこの国疲れた」「あんま信用できない」「〇〇ってほんとはいくらなんですか!?(もう騙されたくないからとりあえず物価を全部頭に入れておきたいパターン)」みたいな人にも会う。
こういうのを日本にいる人が聞くとどう思うだろうか。
それは想像にとどめておこうと思うけれども、ちょっとだけ今までの話を横に置いて想像してみてほしい。キューバ=クラシック!古い建物!昔ながら暮らし!というのが、やっぱり一般的な認識だろう。実際に日本で言う昭和のはじめごろってこんなんだったのだろう。という暮らしが今のキューバだ。つまり同じ時代にして、ここは1950年代や60年代のよう。そして社会主義国。一般的な給料はこれはまだ僕も、あんまり的を得た答えにぶつかっていないんだけれどだいたい30CUC(月収約30ドル)ぐらいだと僕は想像している。
そんな国に21世紀の文明国からどんどん旅行者がやって来るのだ。見たこともないような、あっても一生手に取ることはないようなハイテク機器、カメラ、スマホ、服装をした外国人たちが自分の目の前を歩いている。勝手な想像だけど、未来の人が目の前をどんどん歩き回っているようなものだ。そういう人からは少しでもお金がたくさんもらえたらいいという考えの人も当然出て来るだろう。
けどそういうことがあったからと言って、この国は疲れる。信用できない。となってしまったらもったいないと思う。だってその何倍もの人の親切に日々出会うんだもの。人とのコミュニケーションを避けてしまうようになれば、そういう人たちとも出会えなくなってしまう。
トリニダーで宿泊していた宿のオーナーと話していて、彼が自分と同じキューバ人のことをこう表現していたのが面白かった。
「キューバはね、4人いたら3人がいい人で、1人はいい人じゃない」
これおもしろいなーと思った。
僕らってやっぱり良いことより、悪いことのほうが起こったあとにそのイメージに心が引っ張られがちだと思う。つまり悪いことは尾をひいてその日1日やだなーみたいになったりすることのこと。けどこの考え方をもう勝手に自分で当てはめてしまうとおもしろい。
あーちょっとやな気持ちになったなー。けどまあこのあと3人いい人に出会うから忘れるか!
みたいなこと。
ちょっと嫌になった相手のことを、なんでそんなことになんねん!みたいにいつまでも思っていても相手のほんとの気持ちなんて分からない。そのままの気持ちでいると、きっといい人との出会いすらも失ってしまう。
これって日本の生活でもなんとなく使えるような気がする。
やなことがあったあとにどうやって気持ちを切り替えるか。
おそらく1番大事なものは、自分が今を楽しんでいることだ。引き寄せとかそんなことではなく、自分が良い状態であれば、出会うものもきっと良い方に捉えられるし、ほんとにいいことがあれば正面からそれを受け止めてもっと幸せな気持ちになれるだろう。
日々自分では動かしようのないことが向こうからやってくる。
けどそれに対して、出会ってしまったものに対してどういう気持ちでいるか。
そんなことを旅人さんたちと話しながら考えていた。
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