NightView




「オアハカは治安も良いし大通り外れなければダイジョブですよ」
宿のしげおさんにそう言われて、昼間登った丘にもう一度向かうことにした。
夜10時過ぎ。まだまだ中南米の空気感を知らない僕は、気をつけすぎてもいいくらいだ。

ゲートの鍵は財布についている。20ペソ(150円ほど)だけ財布に入れて、
あとのお札とカードは抜いていこう。iPhoneは・・・もし迷った時にいるか。
あとはカメラと三脚だけ。カメラバッグを肩から斜めがけして、脇に挟むようにして外に出た。

宿から大通りに出て、そこから夜景の見える丘に登るためには細い路地を抜けないといけない。
「外国人」と分からないように、目を合わせないように。
人がいるところでは、街灯に顔が照らされないように影になったところを歩いたり、
俯いたりする。そして時々は後ろを振り返るようにする。

丘を登りきって、そこから昼間写真を撮った見晴らし台になっているところに出た途端、
真っ暗なところで影が動いた。人だ!

一瞬ギョッとしたけれど、近づいてくると警備員の服を着ているので一息つけた。
「フォト!ポルファボール(お願い)!」
と言うと、「どうぞ」とあっさり見晴らし台に通してくれた。
きっと夜のセキュリティで雇われているのだろう。一晩ここにいるんだろうな。

見晴らし台は、僕が入って着た小さな入り口ひとつしかないので、
もし何かあったらとちょっと不安はあったが写真を撮って「ありがとう!おやすみ!」と
警備員さんに伝えて見晴らし台をあとにした。


そのあともう少し、夜景スポットをまわって、それから中心部のソカロ広場に降りた。
通りには生演奏をするBARからの音楽が響き渡り、トウモロコシやホットドッグの屋台が出る。
バイク乗りの集会みたいなのをやっていたり、広場では金管楽器のバンドが演奏していたり、
それから道行く人にお土産を売るどこかの村から出てきたのだろう小さい子ども連れのお母さんも。


昼間とはまた違った顔を見せるオアハカの町。
11時過ぎごろにテクテク宿まで帰ってきた。やっと宿の手前の路地まで来てひと息。


強盗に遭ったあとの1ヶ月は、ときどき町の町へ出歩いた。
お金もパスポートもカメラもスマホも全部盗られたので、もう失うものはないという
開き直った気持ちがあったからだ。
そして、今回は装備もお金も出直して来ているので狙われるものはいくつでもある。
ちょっとだけビビる気持ちもある。むしろ前より全然ビビっている。


けれど、この自分の「どうしよう」「不安やな」を意識しながら、そこにアプローチして
広げていく感じをまた持っていきたい。もちろん用心はして。そうしないと、やはりその国の
暮らしには近づくことができないと思う。


夜の小さな小さな冒険。