完全に調子に乗ってしまった・・・。
夜じゅう雨が降ったいた翌朝。カーテン越しに差す光に勢いがある。
宿のドアを開けてみると、すごいくっきりして色鮮やかな景色が飛び込んできた。
まだ、雨粒が残る木々の葉っぱや花は光の粒がキラキラと光っていて、空の青も抜けるよう。
なんだか新しく生まれたような朝を自転車で走りはじめた。
ただの道路じゃなくて。もっともっとこんな景色の中を走りたい。
人々がどんな朝を過ごしているのか、どんな日常がはじまるのだろうか。
そう思って、あえて国道ではなく村々をつなぐ道路を選んでみた。
牛を引いて草地に連れていくおじさん。自転車の後ろにおっきなカゴを積んで
市場に何か売りに行くいくのだろうか、2台連なって走るおばさんたち。
そうだ。こういうものが見たいのだ。
とニヤケながら走っていると、だんだんと行く道が怪しくなっていた。
あれ?タイヤとられるな・・・と思っていたらズブッとタイヤが埋まった。
なんとかバランスを取り直して走り抜けるも道はどんどん水たまりだらけになっていく。
水たまりのあいだを抜けながら走るも、とうとう目の前に道路端まで横たわる水たまりが現れた。
この辺ならいけるか!勢いよく飛び込んだタイヤはそのままズブッと突き刺さり、
それ以上漕げなくなって思わず右足をついた。ドボンッ・・・・・涙
あーあ右足泥まみれ。続いて水たまりが終わったと思ったら、ドロドロ区間。
これが水たまりよりもタチが悪い。
雪だるま方式で、最初にタイヤにちょっとでも泥がこびりつくと、
それが天ぷらの衣のようにどんどん厚くなっていく。
それでも、おりゃーと漕いでるとついにタイヤが回らなくなる・・・。
泥がつきすぎてフレームとの間に詰まってしまったのだ・・・。
あーあ、もうこうなったらどうしようもない。
手で泥をつかんで取り出す。押し歩く。今度はサンダルが厚底(ドロ底)になる。
またタイヤ動かなくなる。ドロ底サンダルがになる。タイヤ・・・・の繰り返し。
農道をなんとか抜けて次の村に出たころには、もうほんま恥ずかしいことになっていた。
「あんたどないしたんそれ?」という村人の、何してそんなんなったん視線を必死に避けながら
もう農道には何の未練もなくおっきい国道にあわてて戻り、キョロキョロして走る。
何を探す?
水たまりだ。
水たまりでドロドロの厚底サンダルをどうにかせねば、この情けない自転車をどおにかせねば。
いくつかの水たまりを経るも、ねっとりこびりついた泥はなかなか落ちない・・・。
なんてこった、この姿のままであの華やかなお洒落な観光地オアハカに到着することになるのか・・・。
と、半ば絶望しながら、ふと右手を見るとなんと!水道を発見した!
工事現場のところだったので、どうかなーと蛇口を回すと水が出た!奇跡や!
そのお水をドリンクボトルに汲んではフレームにかける、タイヤにかける、ゴシゴシする、かける。
30分くらいして、なんとか見すぼらしくないだけの格好になった・・・。
いまから思うが、あまりの必死さだったために、泥沼に突っ込んだ写真も、洗っているところの
写真もない。
そして、こんなこと半年の旅ではきっとこれから何回もあるはずなのに。
このドロドロ事件が起こったにも関わらず、そのあとキレイになって走りながら、
「あーあ、あれさえなかったらもっと早くついていたのに。自転車をキレイなままやったのに。」
なんとことが頭をグルグルしてしまう情けない自分がいる。
楽勝だったはずの30数キロが、情けないったらありゃしない30数キロとなり。
そして、そんなことに頭をいっぱいにし、振り回される自分をまた嫌になる。
人生一歩一歩ではなく、後退してることもあるなこれは。
そんなこんなでオアハカに到着。
ここには日本人夫婦が経営しているゲストハウスがあり、しかも旦那さんは元自転車旅人。
これからのルートも含めて少し滞在して情報を調べたり、まわりをまわったりするつもりだ。
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